2017年3月の主なニュースより。

1. Amazonは生活の中へ

 宣伝会議4月号の特集は、「Amazon研究」でした。単にネット販売のことだけでなく、生活への浸透という面からAmazonの影響力を考える特集でした。音声認識などの活用を「生活の中のスタンダード」としようとしていると解説しています。
 その特集の中の「米国からレポートするアマゾンまみれの1日」は、米国でAmazon Echoを使いこなしている三浦茜さんが書かれています。8時に起きるところから23時に就寝するまで、Amazonが生活の中に深く入り込んできつつある状況を例で示しています。なお、三浦茜さんは、日経MJ 2017/3/3にも、「音声執事」(アマゾンエコー)と暮らしてみたという記事を書かれています。こちらはネットに全文公開されています。
 Amazonは、イノベーティブな購買体験をもたらす機能・サービスをいろいろと提供し続けることで、普及理論でいう「イノベーター」と「アーリーアダプター」を引き寄せています。同時に、「世界で最も顧客の立場に立った会社になる」という方針をうたうことで、安心して利用できそうと期待させて、多数採用者も引きつける構図を作っています。

2. ファーストリテイリング等のオムニチャネル新戦略

 ファーストリテーリングは先月、スマホサイトのインターフェイスを刷新して、あなたの手のひらに "世界最大のユニクロ" がオープンという広告キャンペーンをテレビなどで行いました。同時に、UNIQLO CITY TOKYOという新しい本社を公開してニュース番組などで報道されました。今年位から、ファーストリテーリングの柳井社長は、ITツールなどを活用するなどして世界No.1のアパレル「情報製造小売業」になることを目指す考え方を示しています。特に、一昨年位から、eコマースの売り上げを将来的に30%に拡大する目標を示していて、今後もいろいろとネット関連の施策を打ち出してくるでしょう。通販新聞2017年3月24日号にファーストリテイリング オムニチャネル新戦略の全貌、〝情報製造小売業〟へ転換という記事があります。
 なお、今回の発表の中でShop by Lookという機能は、「モデルが着ているスタイリングをまるごと買える便利な新機能」という触れ込みですが、ほとんどネットで口コミになっていないようです。モデルの魅力でクチコミを醸成するなどの戦略も取れるかと思いますが、あまり仕掛けていない感じです。ユニクロは、日経BPの「ソーシャル活用売上ランキング」で1位になった年もありましたが、最近はランキングの順位を落としています。ソーシャルメディア活用は少しお休みという感じです。
 大塚家具も、O2O新システムを試験導入することを先月発表しました。このO2Oは、オンラインからオフラインではなく、オフラインからオンラインの流れを狙ったシステムです。店頭で見た家具を自宅に帰ってからARなどを使ってじっくり検討した後に購入する、という流れをスムーズに実現できるシステムです。大塚家具は以前からARアプリは提供していましたが、カスタマージャーニーを検討して、今回のようなシステムを開発したと思われます。オムニチャネルでは、スムーズな流れがとても大事です。IKEAが今月からネット販売を本格的に始めますので、家具販売でもネットをどう生かすかが大きなポイントになります。

3. AIに注意

 eビジネスの分野でも、AI(人工知能)の活用が注目されています。日経デジタルマーケティング4月号の特集は「人工知能の使い方」でした。月刊 事業構想4月号の特集も、「AI時代のビジネスモデル」でした。そのようにeビジネス分野でAIの活用が注目されていますが、注意すべき点を最近の文献などから考えてみます。
 まず、MIT Technology Review日本版のサイトに先月、結論しか出さない機械学習システムでは使い物にならないという論文(和訳)が載りました。「最新の機械学習の手法は本質的にブラック・ボックスだ。機械学習に結論に至った理由を説明させるため、米国国防先端研究計画局(DARPA)は複数の研究に投資している」という米国の動向を説明しています。人工知能には、いろいろな技術要素があります。単純な演繹や帰納で推論させるのであれば、「どのような理由でそのような結論に達したのか?」という質問には答えられるのですが、機械学習(最近はニューラルネットの活用が多い)では、結論に至った理由を人工知能が答えられない仕組みです。多くのデータから学習した結果に基づいて推論する仕組みですので、人工知能側は「なんとなく」と答えるしかないでしょう。そのため、行政機関で機械学習が出した結論を使おうとした場合など「説明責任」が必要な時には、とても問題になるはずです。
 また、日経BPのITProのサイトに経営者も技術者も納得! AIブームのウソとホントという宮崎丈史さんの連載が、1月~3月に載りましたが、その中で「AI詐欺に騙されるな、経営者であっても技術を理解すべし」と警告しています。AIブームに乗って、AIを組み入れた提案をしてくるベンダーが多くなると思われます。ユーザ企業は注意が必要でしょう。
 日本のAI研究者にも物足りなさを感じます。「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトは、去年11月に諦めてしまいました。何らかの成果があったかのような感じの報告でしたが、もう少しがんばってほしかったです。初めからブレークスルーを起こそうとは考えていなかったのではないか、とも感じられます。難しそうなので、安直に次は別なテーマで研究資金を得よう、というような姿勢に見えます。AI研究者にも注意が必要でしょう。

4. データ流通取引に関する検討事例集

 先月、総務省が、新たなデータ流通取引に関する検討事例集ver1を公開しました。実際に相談があった事例を基に書かれた資料です。IoT・行動データ・ネット関連のデータを、新たな目的に利用する上での問題点が示されているため、そのようなデータを活用した新ビジネスモデルを検討している企業には有用な事例集だと思います。特に、個人データの利用は個人情報保護法やプライバシー関連などで問題になることが多いため、このような行政側の検討資料を、事業化の前に参考にしたほうがいいでしょう。
 なお、経済産業省でも、「産業競争力強化法」に係る支援措置として、規制上グレーゾーンの新事業について相談を受け付けています。グレーゾーンであっても諦めずに、新事業を検討してほしいという行政側の姿勢が見れます。これまでの活用実績は、企業実証特例制度及びグレーゾーン解消制度の活用実績のページで参照できます。こちらの情報も、eビジネスで新事業を検討している企業には有用でしょう。

eビジネスの全体像(オリジナル)

 先月、作成してみました。 小著「eビジネスの教科書」の次の版の1章で示すために検討中です。「eビジネス」ではどの範囲まで考えるべきかということも大きなポイントでしょう。大手ネット企業が、どの 分野まで研究や実装をしているかの比較にも役立つと思います。
  左側はビジネス面、右側が技術面として各ビジネス/技術要素を配置しました。ビジネス面を左側・技術面を右側に配置する書き方は、ITILの体系図を参考にしました。

 

成立したビジネス方法特許より

 最近成立したeビジネス関連の特許(特許公報発行日が2017年2月)から、いくつかピックアップします。なお、各発明が実際にサービスに実装されているかは未確認です。

株式会社エアークローゼット スタイリング提供システム(特許6085017) 2017年2月22日発行
 エアークローゼットは、月額制のファッションレンタルサービスです。この発明は、スタイリングをユーザに提案する上で、嗜好の分析を行うだけでなく、「ユーザの今後挑戦したいという意思の分析」も行う点が目新しいように感じました。
 また、この発明は、特許出願前にいろいろなメディアや場で公開されていたようで、【新規性喪失の例外の表示】(特許法第30条第2項適用) が34点も示されていました。こんなに多いのは初めて見ました。

株式会社スタートトゥデイ 商品販売管理サーバ及びインターネット販売促進システム(特許6074350) 2017年2月1日発行
 ZOZOTOWN関連の発明のようです。離反顧客を引き戻すためのクーポン(インセンティブ)の発行方法に関する発明です。「過去にアクセスがあった商品と関連性の高い商品(過去にアクセスのあった商品と同一のものは除く)についてユーザからアクセスがあった場合に、前記ユーザが最後に商品を購入してから所定期間以上経過したと判断したとき、 前記ユーザによる前記オンラインショップの利用機会が少なくなってきていると認識し、該ユーザによる該オンラインショップの利用を引き戻すために、」という狙いでクーポン(インセンティブ)を発行する仕組みの発明です。

グーグル インコーポレイテッド ワンクリックオフライン購入(特許6073326) 2017年2月1日発行
 「モバイルコンピューティング機器の非接触型支払取引を開始するためのコンピュータ実装方法であって」という発明ですので、Android Payの仕組みと思われます。

 

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2017年04月04日
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