2017年4月の主なニュースより。
1. 経済産業省が発表した電子商取引に関する市場調査
経済産業省は、平成28年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)を4月24日に発表しました。
同様な調査は、平成10年度の調査から、ほぼ毎年公表されています。昨年度は6月14日に発表されましたので、2カ月ほど発表が早まりました。この調査のデータを意思決定に使う企業もあると思いますので、発表を早めたのはいいことだと思います。
国内BtoC-EC市場が15兆円を突破し、EC化率(物販)は5.43%となりました。伸び率が2015年度に少し落ちましたが、2016年度は2014年度以前の傾向に戻ったという感じです。まあ、ほぼ順調な伸びと思います。中国やインドのように急速に伸びている国と比べると物足りないと思いますが、リアルの流通を急激に減退させることのない程度の伸びが望ましいのかもしれません。また、中国向け越境EC市場も1兆円を突破しましたので、越境ECも今後期待できるでしょう。
また今回の調査から、CtoCについての調査結果も追加されました。リユース品のフリマアプリでの売買の傾向や、今後のシェアリングエコノミーの展望などが述べられています。推進のための政府の取り組みについても示されています。
2. The Mother of Internet ~インターネットの歴史~
Yahoo! JAPANは、4月1日、21年間のインターネットの歴史を振り返る巨大イラスト THE MOTHER OF INTERNET ~インターネットの歴史~ を特設サイトで公開しました。「ここはインターネットの歴史そのものによって築かれた、超時空都市」というイメージの巨大イラストで、国内外のインターネットサービス21年の歴史が1390項目で構成されて、空中の都市のように表現されています。多少動きもあり楽しいですし、どのサービスがいつから始まったかが分かるため、歴史として学ぶための教材になるでしょう。Second
Life, MySpace, Lycos, BK1 など、なつかしい企業名を見ることもできます。
3. Amazonフレッシュの開始と反響
4月21日、生鮮食品や日用品などを購入できるAmazonフレッシュが都内の一部エリアで開始されました。アメリカのシアトルでは、10年前から行われているサービスです。日本での品揃えは、1万7000点以上の食料品のほか、日用品・雑貨など、計10万点以上の商品を購入可能。ただし、アマゾンプライムユーザ限定のサービスとなっています。反響ですが、日経産業新聞2017/4/25「生鮮配送アマゾンフレッシュ試してみた」という記事(ネット上の電子版では「アマゾンフレッシュ」使ってみた)では、「保管温度に応じ別袋」など、きめ細かいサービスが紹介されていました。ただし、その記事では「対象地域が広がり、利用者が増えても配送スピードや商品の鮮度は維持できるか」を課題にあげていました。
このサービスに関して、イーロジットの角井亮一氏は、ダイヤモンドオンラインに「アマゾンフレッシュ」の生鮮宅配にヨーカドーとヤマトが負ける日という解説を書かれていて、警鐘を鳴らしています。アマゾンフレッシュとイトーヨーカドーネットスーパーを比較して、品揃えの多さや商品の質(オイシックスの美味しい有機野菜)などの点から、アマゾンフレッシュの優位性を指摘しています。また、アマゾンフレッシュで再配達をしない点は、確かにあまり問題にならないかもしれません。既存のネットスーパーは、戦略の練り直しが必要になりそうです。
4. 物流(ヤマトの値上げ、再配達削減)
ヤマト運輸は4月28日、宅急便基本運賃を9月末までに値上げすることを発表しました。その背景には、ネット通販の拡大による再配達の増加があります。
ネット業界でも、再配達削減のための動きがいろいろとあります。まず、楽天は4月5日、再配達の削減に向けた日本郵便と連携を強化することを発表しました。初回受け取りでポイントアップ、自宅以外の受け取り拠点に郵便局2万カ所を追加、配達を事前に通知するなどの対応を発表しました。
また、西友は4月4日から、再配送(またはキャンセル)をネットの申込み画面で受け付け、再配送手数料(400円)は自動的に請求額に追加される対応としました(キャンセルでも400円)。これまでは、再配達の後に銀行振り込みとしていましたが、手数料支払いを徹底した感じです。ITMediaのニュース記事に、ユーザーに届いたメールがあります。また、ASCIIのサイトに、再配達の有料化は効果あり?再配達料400円の西友が急成長という記事が載りました。これまでは、再配達料で大きなトラブルはなかった感じですが、手数料支払いを徹底することでどうなるでしょうか?気になります。
その他、通販新聞 2017/4/20号に、宅配便の再配達削減へ 荷主サイドが配送業務改善、受取手段の多様化進展にという解説があります。
角井亮一氏は、日経産業新聞2017/4/17に「ヤマト値上げ、通販に一石」という解説を書かれています。また、村山らむねさんの日経MJ2017/4/21のコラムネット通販の宅配逼迫 「送料無料」の功罪の中に、角井亮一氏へ「宅配サービスについて、いま消費者に求めたいこと」を質問して返答された内容が書かれています。
5. 電子タグ活用のセルフレジ
eビジネスの話でなくリアル店舗の話題ですが、経済産業省は4月18日、「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」の策定の発表をしました。経済産業省と大手コンビニエンスストア5社は2025年をめどに、全ての取扱商品(推計1000億個/年)で電子タグ(RFIDタグ)を活用することについて、一定の条件の下で合意したことが発表されました。電子タグを付けることで、流通量の把握や、レジ・検品・棚卸業務の高速化などにつながることが期待できるとしています。なお、
ジーユー、電子タグ活用のセルフレジ本格導入、8月までに176店舗というニュースも4月12日に報じられましたし、ファッション業界では5年位前から検品の作業軽減などの目的で、電子タグの導入が進んでいます。ファッション業界の動きのほうが早いかもしれません。
しかし、Amazon Goでは、多くのカメラやセンサー等を活用する方式でレジを不要とする実験が行われています。そのように他の方式も考えられるため、政府が中心となってロードマップを作る必要はないように私は感じます。
成立したビジネス方法特許より
まず、ビジネス方法特許(ビジネスモデル特許)の重要性に関する解説記事が日刊工業新聞のサイトに4月20日に載りましたので紹介します。弁護士/弁理士の鮫島正洋氏によるビジネスモデル特許で第四次産業革命下の競争に勝つです。特許として保全すべき対象は個々の技術ではなく、「新しい収益モデル」となる、という主張は私も言いたかったことです。
以下、特許公報発行日が2017年3月のeビジネス関連の特許から、いくつかピックアップします。なお、トーマツの特許以外は、各発明が実際にサービスに実装されているかは未確認です。
有限責任監査法人トーマツ 分析方法、分析装置及び分析プログラム(特許第6085888号) 平成29年3月1日発行
この特許に関しては、トーマツからプレスリリースが出ています。複数の人工知能技術を応用したテキスト分析技術の特許で、複数の人工知能技術を応用していることが特徴です。会計監査、およびアドバイザリーサービスに活用するとのことです。
大日本印刷株式会社 店舗支援システム、携帯端末、通信装置、およびプログラム(特許第6098232号) 2017年3月22日発行
ジオフェンシング関連の特許のようです。「通信装置と通信を確立してから所定時間継続して通信状態であった場合、通信装置から受信した広告情報を表示する携帯端末」という請求項を抑えているので、興味深い特許です。
フェイスブック,インク インフルエンサスコアに基づいてストーリをターゲティングする方法 (特許第6092362号) 2017年3月8日発行
フェイスブックも、内部的にインフルエンサスコアを算出していることをうかがわせる特許です。
凸版印刷株式会社 電子チラシ配信装置、電子チラシ配信システム、電子チラシ配信方法及びプログラム (特許6086012) 2017年3月1日
シュフーに関する特許と思われます。特許内容としては、「配信関連条件が示す閲覧履歴の内容に一致する閲覧履歴を有するユーザを電子チラシの配信対象として選択する」ことがポイントのようです。