2017年6月の主なニュースより。
1. アマゾンの動向より
まず、週刊東洋経済 2017年6月24日号に、アマゾン膨張 追い詰められる日本企業という特集が組まれました。プライム会員が、米国で8000万人、日本で800万人(推定)に達するなど、利用者・売上の拡大を続けているアマゾン。日本でのヤマト運輸や日本出版販売との摩擦や、生鮮品への進出(Amazon
Fresh)など、最近話題になっていることが詳しく取材されています。また、これまでの物流拠点やプライム特典の拡大について時系列でまとめられているのも、私にはありがたかったです。
アマゾンジャパンが、公取委の独禁法違反調査を受け、最安値保証契約を見直したことも大きなニュースです。公取委はアマゾン側の自主的な契約見直しで「我々が問題視していた疑いが解消され、是正を指導する必要がなくなった」とし、アマゾンへの審査を終了するとした、とのこと。通販新聞 2017年6月8日の記事より。
物流については、アマゾン、独自の配送網 個人事業者1万人囲い込み という記事が日本経済新聞・電子版に載りました。注文当日に商品を届ける「当日配送サービス」を専門に手がける個人運送事業者を2020年までに首都圏で1万人確保する、とのこと。米国ではアマゾン・フレックスというサービス名で既に行われているサービスですが、日本でも始める計画のようです。
米国では、Amazon.com、高級スーパーチェーンWhole Foodsを約137億ドルで買収へという6月16日の発表もインパクトがありました。今後具体的にどうするかはわかっていませんが、アマゾンが本格的にリアル店舗経営に乗り出すことをコミットしたわけですから、発表だけでも影響が大きいでしょう。ただし、日経MJ
2017/6/23の記事「アマゾン、狙う実店舗価値、アナログ×デジタル 小売りに革新」によると、「アマゾンが名乗りを上げ、合意に至るまでわずか2週刊程度だったという」とのことです。ですので、買収後の綿密な計画はまだ立てていないと思われます。これから、今後の物流面や顧客戦略などでのネットとリアルのシナジー効果を模索するのではないかと思われます。うまくいけば、他国でもリアルの流通企業を買収することになるかもしれません。
将来的な話としては、AIアシスタント「Alexa」の開発を指揮しているデヴィッド・リンプへのWiredのインタビュー記事 アマゾンが「Alexa」の先に描く『スタートレック』のような近未来も興味深いです。「どこにいてもどんなことでも質問することができ、アンビエントインテリジェンス(環境知能)が人間のあらゆる要望に応えてくれる」未来が来るのかもしれません。
2. Instagramへの対応の拡大
Instagramの利用者が増えているため、大手ネット企業も対応するようになってきました。
まず、楽天は「インスタ」で出店店舗を支援する仕組みを構築。インスタグラム利用者の中から「ショップアンバサダー」(コーディネートをインスタグラムに投稿)を募集。店舗がエントリーがあったユーザーの中から、自社商品のイメージに合致する人をアンバサダーとして選ぶという仕組み。店舗はアンバサダーに対し、半年間に渡って毎月、合計1万円相当の服を提供。通販新聞 2017年6月15日 より。
また、ヤフーはリアルタイム検索でInstagramの検索に対応。検索対象は、まずはフォロワーが多く人気がある約500アカウントから提供を開始し、順次拡大、とのこと。
3. LINEの動向
まず、新しいアフィリエイトを開始しました。LINEショッピングを経由して企業の通販サイトで買い物をすると最大で20%のLINEポイントが付与、とのこと。これまでEC面はうまくいかなかったですが、どうでしょう。LINE、ポイント流通促し"LINE経済圏"狙う、という通販新聞 2017年6月22日の記事があります。
また、LINEは、人工知能(AI)による新たな戦略を明らかにしました。 クラウドAI「Clova」技術に対応したAIスピーカーを発表したり、ファミマとともにAIを活用した次世代店舗開発の計画を発表をしました。
4. ウーバーで宅配/輸送サービス
ウーバーを活用した宅配サービスとして、マクドナルドが都内の一部でウーバーで宅配サービスを開始することが発表になりました。ウーバーテクノロジーズの食品宅配サービス「UberEATS(ウーバーイーツ)」を使い、ハンバーガーなどの商品を注文できるようになるとのこと。配送手数料は380円で、公園などにも配達してくれるとのことです。
米国では、貨物輸送トラックの配車サーヴィス「Uber Freight」を発表されました。トラック輸送にも変革をもたらすかもしれません。Wiredの記事より。
5. 第1回 「デジタルマーケティング100」
日経デジタルマーケティングは6月21日、第1回 「デジタルマーケティング100」を発表しました。昨年度までの5年間、「ソーシャルメディア活用売上ランキング」という名前のランキングでしたが、今回は対象をデジタルメディア全般に拡張して新たな名前のランキングになりました。
1位 = 無印良品 --- インスタとアプリが貢献
2位 = マクドナルド --- アプリとオウンドメディアBurgerLoveにより「マクド愛」高まる
その他、サーティワンアイスクリーム(27位)は、SNS映えするアイスを開発するなど、ユニークな取り組みをしています。
詳細は、日経デジタルマーケティング7月号をご覧ください。
成立したビジネス方法特許より
以下、特許公報発行日が2017年5月のeビジネス関連の特許から、いくつかピックアップします。なお、各発明が実際にサービスに実装されているかは未確認です。
楽天株式会社 提案サーバ、提案システム、提案方法、プログラム、及び、非一時的なコンピュータ読取可能な情報記録媒体(特許第6134457号)
平成29年5月24日発行。
写真と、取得された所在と、に基づいて、携帯端末のユーザが置かれている状況を推定。そして、推定された状況に応じた商品及び当該商品の広告を選択する、という仕組みの特許。執行役員
AI推進部ジェネラルマネージャーの茶谷 公之氏(元ソニー)が発明者。
楽天は4月に、日本IBMと「楽天AIプラットフォーム」(チャットボット機能) を発表するなど、AIへの取り組みは熱心で、この特許もAIを活用した仕組みのようです。
ヤフー株式会社 推定装置、推定方法および推定プログラム(特許第6134847号)
平成29年5月24日発行。
収集された環境音に基づいて、利用者が所望する取引対象を推定する発明。AI スピーカーに関連して、今後もこのような発明が出てくると思われます。
株式会社ジグザグ ECの海外への提供を支援するための方法、そのためのプログラム、及びサーバ(特許第6132379号)
平成29年5月24日発行。
リダイレクト越境ECの仕組みに関する特許のようです。
スルガ銀行株式会社 推奨与信枠算出装置 (特許第6127014号)
平成29年5月10日発行。
顧客の勤務先業種や、職種、取引状況等の情報に基づいて、推奨与信枠を算出し、今後必要な金額を把握し、金融機関からの融資の目安として利用することができる推奨与信枠算出装置を提供する仕組み。
勤務先の業種の情報から年収を予測したり、資産や顧客の住む都道府県を考慮するなどして与信枠の判断材料にする点などがユニークなのでしょう(7/18修正)。