2017年7月の主なニュースより。
1. IoTのEC活用・プラットフォーム戦略
月刊ネット販売の2017年8月号の特集は、「進むIoTのEC活用の今」でした。アマゾンダッシュボタン、アスクルのXperia Touch向けアプリ、パナソニックのスマートコーヒー焙煎機が取り上げられていました。IoTは製造分野での活用が急速に進んでいますが、EC分野でも特にアマゾンが熱心であり、他の企業でもIoT活用が進みそうです。また、ヤフージャパンのmyThingsも今後はEC向けの機能を追加すると思われます。関連してマーケティング分野でもIoTへの関心が持たれて始めています。宣伝会議の6月号の特集は、「IoTとマーケティング」でした。
IoTのプラットフォームという面では、先月コマツがIoTプラットフォームをオープン化すると発表しました。この発表はインパクトがありました。NTTドコモやSAPなどと共同でIoTプラットフォームの「ランドログ」を立ち上げ、建設業界でのIoTのプラットフォームとなることを狙っているようです。日経ビジネス
2017/07/31号 時事深層 IoTプラットフォーム争いに参戦 コマツが「開放」路線に転じた理由で、コマツの大橋社長は「データは他社にも公開する」と強調しています。また、日経産業新聞2017/7/25の記事では、「建設版アップルストアめざす」という狙いが示されています。先月のIT
Japan 2017では、コマツの野路会長は、コマツは自ら破壊的イノベーションを起こすと述べていました。そのような意識があったため、このような思い切った戦略を取ったのでしょう。
2. 楽天と電通が楽天データマーケティングを設立
楽天と電通は7月26日、データ活用マーケティングで合弁会社楽天データマーケティング株式会社を設立することを発表しました。10月より営業を開始予定。AdverTimesのインタビュー記事電通と楽天が新会社設立―社長に就任した有馬誠氏に聞くによると、「国内の楽天会員数は約9000万、楽天スーパーポイント発行数は累計で1兆ポイントを誇り、質と量と兼ね備えたデータが楽天グループの強み。電通が持つ顧客基盤・戦略構築力、クリエイティブ力、マスメディアのデータインサイトと楽天グループのビッグデータを融合させることで、マーケティング業界のイノベーションを起こしたい」。具体的には「両社が組むことで、テレビCMが実際にどれだけ購入につながったのか、効果検証も可能になる」と説明。楽天市場などオンラインチャネルでの購買だけでなく、楽天スーパーポイントを利用したリアル店舗での購買行動も検証していく考え、とのこと。ネット・リアル・マスメディアのデータを活用して分析することで、高精度のマーケティング情報の取得を期待できると思います。
3. 匿名加工情報の活用について
改正個人情報保護法が5月に施行されて認められることになった匿名加工情報について、いろいろと話題になっています。
まず、日経ビジネス 2017/07/17号スペシャルリポート 眠れるビッグデータの活用法 個人情報を企業間で共有 「匿名化」で生まれる商機という記事は興味深いです。匿名加工情報を、単に別々な情報として集めてもあまり意味がありません。フロムスクラッチが行っているのは、同じ人と思われる人の情報をデータベース間で結合(JOIN)するような処理です。ですので、企業にまたがったマーケティング情報(どんな属性・趣味の人が、どの位の割合で、どの商品・サービスを購入しているかや、併売しているかや、その人がどのような消費行動をとっているかいった統計情報など)が分かるわけです。匿名化されていても、それだけでも貴重な情報なのです。また、顧客のセグメント化もできるようになるのでしょう。
経済産業省の外郭団体の日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)は、匿名加工情報の事例集を公開しました。さらには、個別のご相談を受け付ける体制を整えたことを発表しました。経済産業省は、匿名加工情報の活用推進に熱心です。
また、経産省、不正競争防止法改正でデータ無断利用に歯止め検討というニュースも報じられました。データの不正取得も心配されるためです。
情報銀行については、イオンフィナンシャルと富士通が共同で「情報銀行」の実証実験を行うことが発表されました。富士通が自社の従業員を対象に、パーソナルデータ提供者が自らの意思で情報銀行に預託する情報銀行を構築するとのことです。なお、また、情報銀行については日経産業新聞2017/7/24に解説記事があります。
4. 三菱UFJフィナンシャル・グループのFinTechへの動き
FinTech関連では、三菱UFJフィナンシャル・グループは7月31日、Japan Digital Design 株式会社の設立を発表しました。内部的な組織のイノベーション・ラボの活動を拡大し、研究開発や各地域における次世代イノベーション人材との協働を進めるため、地域金融機関との業務提携を行う方針のようです。
日本経済新聞2017/7/31によると、IoTの決済システムを開発する予定とのこと。IoTと決済システムをつなげることができれば、機械などを利用した時間/量だけの課金・決済なども可能になると思われます。
5. 祝、みずほ銀行の次期勘定系システムの開発完了
eビジネス関連のニュースではありませんが、みずほ銀行は7月31日、次期勘定系システムの開発を完了し、8月から利用部門における数カ月間の受け入れテストを進め、システム移行に向けた準備やリハーサルに取り組むことを公表しました。
このみずほ銀行の次期勘定系システムについては、2チャンネルにスレも立っていて、いろいろとたいへんな状況が伝わってきていましたので、完成して関係者はホッとしているでしょう。しかし、移行が完全に終わるまでは気が抜けないでしょう。
成立したビジネス方法特許より
以下、特許公報発行日が2017年6月のeビジネス関連の特許から、いくつかピックアップします。なお、各発明が実際にサービスに実装されているかは未確認です。
寺田倉庫株式会社 譲渡仲介システム(特許6147401)
2017年6月14日発行
保管対象の物品についての情報を管理するとともに、保管物品の譲渡を仲介(あっせん)する仕組み。寺田倉庫のminikuraのサービスに関しての特許は、保管依頼品寄託方法及び寄託システム(特許第5578581号)が2014年に成立しています。今回成立した特許は、 保管物品を販売できるminikuraTRADEに関する仕組みと思われます。
凸版印刷株式会社 電子チラシ配信装置、電子チラシ閲覧制御方法及びコンピュータプログラム(特許6142625)
2017年6月7日発行
ポイント付与ルールに従い閲覧ポイントを付与する仕組み。 凸版印刷は、電子チラシのシュフーに関する特許をいろいろと取得していますが、この特許はシュフーポイントに関する発明と思われます。
株式会社さくらトラベル 販売処理システムおよび販売処理プログラム(特許6145200)
2017年6月7日発行
さくらトラベルは、国内の航空会社の格安航空券を比較・予約するサイトを運営。決済後に優待価格購入券の識別情報を表示する仕組みの発明であるため、株主優待割引運賃(株主以外でも利用可能)の航空券を販売する仕組みと思われます。なお、特許分割前の出願も、特許5969085として成立しています。
株式会社ソキュアス 取引システム(特許6151041)
2017年6月21日発行
ソキュアスは中小メーカーのネットショップ立ち上げ・運営などを支援する企業。ユーザごとの収入ポイントおよび支出ポイントの差分の絶対値と,特定した利用料率とを用いて,各ユーザの利用金額を算出する仕組みが特許成立。